『恐れながら社長マーケティングの本当の話をします。』を読んで。

マーケティング基礎

2020.02.15

桜井 貴斗

マーケター桜井 貴斗

こんにちは、桜井です。

小霜和也さんの「恐れながら社長マーケティングの本当の話をします。」を読んで心に残った言葉を書き記していきたいと思います。


マーケティングの定義

これはアメリカマーケティング協会(AMA)が2007年に定めたものですが、僕なりに意訳し直しますと、「生活者の中に商品やサービスへの価値を生み出すために、商品開発から販売現場まで設計・管理すること」となります。

ドラッカーはマーケティングを「販売をなくすこと」と訳したかと思いますが、大きくは一緒で「価値をつくる仕組みをつくる」ことではないかと思います。

これを「売上をつくる仕組み」とするか「価値をつくる仕組み」とするとではスタンスがかなり変わります。個人としては消費者への価値提供の対価が売上であると思いますので、小霜さんの定義に大賛成です。

戦略はローマ帝国から学ぼう

企業は、と言うより日本は、ローマ帝国のやり方から学ぶものが非常に多いと思ってます。

(中略)

将軍が戦争に負けると罰するどころか「何か学んだに違いない」ということで、必ず次の戦いに起用するんです。そして二回目は勝つ。すごく合理的な考え方じゃないですか?

PDCAやPDSAは失敗を前提としたメソッドです。失敗におびえる企業内体質のままでは失敗しても成功したと改ざんされてしまい、真の正スパイラルは生まれません。企業は成長するという使命がありますが、成長の原動力は学習です。失敗の正しい評価が学習を生み出します。

会社でも事業でもチームでも、任されてチャレンジして失敗した経験って結構記憶に残っています。当たり前ですが成功よりも失敗の方が多いので、そうなると失敗の経験の方が数多く記憶に残るようになります。

人は失敗からしか学ばないと思っているので、どれくらい失敗してきたか?その失敗をいま、どのように活かしているか?を語れる人が強いビジネスマンだと思います(学習能力がある前提ですが)。

CMOに求められる条件

CMOも、ちょっとこれに似た匂いがするんです。「4P全部まかせとけ」なんて言える人、どれくらいいるんでしょうか。商品の上市を成功に導くためにはこれだけの能力が求められるはずです。

・市場動向、生活者インサイト動向の洞察力
・STPの戦略立案力
・投資計画、予測P/L策定の財務知識
・商品製造の原価計算、リクープライン(投資回収のタイミング)の知見
・パッケージデザインの知見
・稟議をトップへ通し納得を得るためのプレゼンテーション力
・多部門を率いるマネジメント力
・各部門から協力を引き出すファシリテーション力
・プロモーション全般、コミュニケーション設計、広告表現についての構築力・判断力
・流通支援、店頭での販売促進の知見
・営業との折衝力
・社外パートナーの力を引き出すマネジメント力
・マーケティング施策全体のモニタリング力
・法改正などルール変更への対応力

CMO(Chief Marketing Officer)=マーケティング最高責任者とは何が求められるか?について、小霜さんは上記を挙げています(求められるスキル一覧を見た時、ゾッとしました笑)。

なぜなら、CMOの役割には「セールス・デザイナー・アカウンティング・マネジメント・リーダーシップ」などの横断的なスキルが必要になるからです。

またこうも言っています。

ブランドマネージャーは1つの商品について4P全てが責任領域、ということでCMOの理想像に非常に近いです。

全商品のブランドマネージャーが理想のCMO、とも言えるでしょう。一時はどのメーカーでもブランドマネージャー制が花盛りだったのですが、やや尻すぼみ気味になって来ている理由としては、やはり責任と権限の不一致があります。また短期成果を求めがち/求められがちで、上市の年は調子よかったけど2年目以降はガクッと売上が下がるとか。

マーケティングとブランディングは密接に関わっていると思うのですが、個人的な解釈としてはブランディングはマーケティングの一部かなぁと思います。

フル・ファネルの設計には社長の威光が必要

これを実行するにはWEBは当然として、TVCMからチラシまでターゲットへあらゆるコンタクトポイントがどれだけ態度変容に直接的・間接的に寄与しているかを分析し、再現度高くシミュレーションすることが必要ですが、そこまで徹底してやっているエージェンシーは「ない」と言えます。

では、なぜ僕は上記のようなやり方を可能にするのか?

社長の威光です。僕はトップから依頼を受けて広告主のアドバイザーとして入ります。そして、ホットラインで連絡を取りながら、全体の調整をするんです。そうじゃないとフル・ファネルを一気に設計するのは無理です。

もう少し小ぶりな広告主ですと、ひとつのマーケティング部がマスもデジタルも両方見ていたりします。ただ予算が少ないので、トップ・ファネルとミドル・ファネルのどっちかに加えてリスティング、というふうになりがちなんですよね。 マーケティングファネル(漏斗)は「トップ・ミドル・ボトム」に分かれていて、それぞれ目的が異なります。

さらにマスからデジタル・さらに属性・商品との相性・時期などによってアプローチが変わってきます。さらさらに、「マスとデジタル」の担当が違ったりすると、組織分断され一気通貫で進めるのはほぼ不可能だと感じています。

だからエージェンシーは貰った予算で部分最適に走り、クライアントは予算最適化に終始し、「エンドユーザーへの価値提供」や「業績に直結するフルファネルのマーケティング戦略」は置いてけぼりになってしまいます。

組織間のセクショナリズムが一番面倒であり、エージェンシーではどうにもできない壁だと思います(だからこそ、求人/採用支援の経験のある私が組織変革のスキルを身につけようとしている背景もこんなところにあります)。

だからこそ、社長の「トップダウン」がないと実現できない、ということです。

この章で僕が言いたいことは、マーケティングは組織が新しいマーケティングを担えるカタチになっていなければできないってことです。たとえそれがPromotion領域に限られたとしても。

企業は経済合理性に基づいて活動するのが大原則のはずですが、組織内の動きは人と人の関係性やそれぞれの勝手な思惑に基づくことが多いですよね。従業員の利益と企業の利益が相反することは往々にしてあり、その場合従業員が選ぶのはほぼ必ず自分の利益です。

部門ごとの部分最適に躍起になりながら横との軋轢を避けることが優先順位1位になるのですが、そうなると稟議書・根回しに膨大な時間がかかるのでビジネスのスピードが遅くなり、独自性あるアイデアは最大公約数化していって力を失う。全員納得のアイデアは誰でもできるもなのですぐ競合に真似されてコモディティ化に陥っていく。

私が言いたいことをすべて言語化してくださっていました(笑)

「部門間連携度」のような人事評価指標を設けよう

大事なのは、部門長が気にすべきポイントを部門「内」ではなく、部門「間」に変えることです。たとえば、「部門間連携」のような人事評価指標を設けてもいいんじゃないでしょうか。

ハーバード・ビジネススクールの調査などで、個人のパフォーマンスはその人の能力よりも協働する人との良好な関係性が大きく寄与していることがわかっています。

社内外の組織を見ていて、すごーく感じるのは「組織間連携が全然ない」ことです。従業員が100名以上を超えてくると、組織が細分化され、事業所も分かれ、同じ会社なのにそれぞれが他人(他人ではあるんだけど、、)の顔をしてしまいます。

だからこそ部門間連携を意図的につくらせるべく、評価指標として取り入れるのは大賛成です。部分最適ではなく、全体最適を進めていくにはスローガンやメッセージだけではなく、評価として強制的にアクション喚起させることが重要なのだと思います。

リーダーシップとマネジメントの違い

リーダーシップとマネジメントはやや意味が異なります。
僕の解釈ではリーダーシップは「意志」、マネジメントは「技術」。

従業員を一つの目的に向かわせる意志と、その向かわせ方を正しくする技術です。どちらも分業化された組織を有機的に一つの目的に向けて走らせることに寄与しますが、永続的に成長を続ける企業とそうでない企業の違いは、リーダーシップとマネジメント体制の有り無しだと言われます。

私個人の解釈としては、

リーダーシップは「向かうべき山を見つけて旗を立てる人」。マネジメントは「決められた山を叱咤激励しながら一緒に登る人」のようなイメージです。

小霜さんの解釈を前提とするならば、マネジメントは技術であるから「いつか身に付く(=経験値)」に対して、リーダーシップは「意志」なので志がなければいつまで経っても身に付かない、むしろ年齢に関係なく志があれば若かろうとリーダーシップは身に付く、ということになります。

私は意志ある人間であり続けたいと思っています。

企業の大きな問題は実行力の有無

また、これはマーケティングに限らずですが、企業にとって大きな問題は、理論の正しさではなく実行力のなさであるとよく耳にします。

「企画」とは「企てる」と「画する(カタチにする)」がセットになっていますが、カタチにならなければ企画という言葉は意味を持ちません。それと同じことです。

先ほどの組織間のセクショナリズムや部門単位の部分最適に陥ってしまう話と似ていますが、これからを束ねるには「実行力」が必要になると思います。

経営コンサルタントがやればいいのか?いえ、これもマーケターの役割にすべきだと思います。

じゃあどんな組織体系が理想なのか?

これからはマーケター(ストラテジスト)が総リーダーで(これは広告主が自らやるようになって来ています)、その下のスタッフの全体リーダーがデジタル運用までできるメディアプランナー、その下にクリエイティブチーム、という構成でなければいけません。

ローカルにはまだまだマーケティング部・マーケターという役職を目にすることはあまり多くありません。それだけエージェンシー頼みになっている、ということでもあると思います。

企業内にマーケターを育成しながらも、育成を助長できるようなエージェンシーと付き合うことができればいいんじゃないでしょうか。

ビジョン・ミッションの違い

ミッションは「天から授かるもの」なのです。「ビジョンを設定する」とは言っても「ミッションを設定する」とは言いません。逆に「ビジョンを授かる」とも言いません。ここが、ミッションとビジョンの最も大きな違いです。

ミッションとは、企業の存在理由です。「これを成し遂げるならば、汝の会社が存在することを許すぜよ」というものです。

次にビジョン。
これは「これから2~3年ぐらいで達成する目標」ぐらいに捉えればいいと思います。中期経営計画と繋げてもいいでしょう。ミッションと違って定期的に見直し続けることが肝要です。

クライアントのWebサイトでビジョンとミッションを見ると結構おもしろいです。

ビジョン・ミッションに沿った事業を行っているか?働いている社員はビジョン・ミッションを理解し、体現しているか?最近はビジョン・ミッションが会社の末端まで浸透し、一体となっているかどうか?を見るようにしています。

自己決定は幸福感を決定づける

つい最近の神戸大学の調査では、幸福感を決定づける因子として、学歴や年収よりも「自己決定」がはるかに勝っていました。

働く上で発生する軋轢は数えたらキリがありません。かといって、軋轢を生まないように生きていくだけでは無意識にストレスが溜まります。

じゃあどうするか?の答えは「自分で決めること」だそうです。自分で決めれば誰のせいもできない。割り切れる。後悔しない。うまく行ったときは何倍も嬉しい。だから結果、幸福感を感じられるんだと思います。

企業の広告、競合意識しすぎている

「広告がつまらくなった」と言われ出して久しいですが、生活者を見ているようで実は競合の動向ばかり見ている企業の姿勢が広告からにじみ出ていて、その姿勢に嫌気が差し始めたかもしれません。

そして「競争」というものを気にしない企業で成功している事例が増えてきてるんですね。例えば湖池屋はカルビーの動向は一切気にしない、という方針を転換することでV字回復が始まったそうです。つまりこれまでは常に競合他社の動向を気にして、あっちがこう出てきたらこっちはこう出る、といったやり方でした。

これからは常に顧客の動向を気にすべきだろうと。顧客がこう出てきたらこっちはこう出る、といったことを素早く動的に行うやり方が勝ち筋であるということです。

広告がつまらないのは顧客(消費者)を置いてけぼりにしてしまったからだと思います。

そして総じてどの業界も市場が縮小していっていく中、競合を意識し続けても市場そのものがなくなってしまう可能性があります。市場をつくるのは商品やサービスですが、それは顧客(消費者)があってこそ。

顧客が主役の広告を作っていきたいと思います。

変革の変わり目は課長クラス

狙い目は課長クラスです。

彼らには(まだ)ピュアな人が多いです。純粋に会社の現状を憂いていて、「もっとこうあればいいのに」とフラストレーションを抱えています。能力もあって、特に新しいテクノロジーについては部長クラスよりもリテラシーが高いです。

多くはミレニアル世代なので新しい価値観を持っています。これが上に行くほどがんじがらめになっていくのです。下から上がる報告は嘘ばかりという話をしましたが、何を私利私欲だけでそうしているわけではありません。

自部署を守るため、他部署との軋轢を減らして仕事をスムーズに進めるため、そうせざるを得ない状況に追い込まれているのです。部長がバランサーになっているんです。

小霜さん、なぜここまで把握できているんですか・・・と感銘を受けるくらい共感してしまいました。最近では課長よりも下の係長クラスでも同じような悩みを抱えていると思います。

バランサーになることでがんじがらめになる、ということですが、本当にバランスを保つ必要のある事態なのか?放っておいて崩れるようなものなら壊した方がいいじゃないの??というのが持論です。

もっとピュアで真っすぐでリテラシーが高い人たちが報われて欲しいと思います(というかそういう世の中にしたい!)。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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