『デジタルマーケティングの定石』を読んで。

マーケティング基礎

2020.09.22

桜井 貴斗

マーケター桜井 貴斗

こんにちは、桜井です。

『デジタルマーケティングの定石』を読んで、心に残ったことを書き残してみたいと思います。


デジタルでは「見込み客の質」を高められない

デジタルには、人間の営業担当のような柔軟な説得ができないため、見込み客の質を高めることはできません。無理やり質を高めようとすれば、本来お客さんになるはずだった人までシャットアウトしてしまうのです。

(中略)

デジタルは、お客さんになる見込みが少しでもありそうな人を、大量に集めることに注力すべきです。
見込み客の質を判断できる情報をヒアリングし、そのあとは営業担当が自らお客さんを選ぶべきなのです。

これは私自身も「問い合わせの意志」を持った質の高いユーザーを呼ぶための施策をいくつかやってきたし、クライアントにも同様のことを求められてきました。
でも実際にデジタルはそんな魔法の杖ではなく、、、様々な変数が関係していると感じています。

◎デジタルで質の高いリード獲得を相関するであろう変数
・ブランドの認知度
・ブランドへの好感度
・キャンペーン/施策の魅力
・ターゲットユーザーの心理状態
・同業他社(競合)の取り組み内容との相対的な比較
などなど

つまり「デジタルでやること、デジタルでやらないこと」をしっかりと区別し、ある種割り切って営業やインサイドセールスに引き渡す、という座組を組む必要があるなぁと思っています。


デジタルは人間がしないことを代用させる

人間には時間の成約がありますし、人件費に見合う成果を上げなくてはビジネスが成立しません。
人間が時間をかけても、なお余りあるリターンを期待できるなら、それは人間の仕事です。

つまり、デジタルは人間が対応しても費用対効果が合わないような、大半のユーザを自動で接客することに強みを持つのです。
費用対効果が合わないユーザとは、すぐには購入しない「潜在的なユーザ」、購入する商品の「単価が低いユーザ」、訪問が困難な「地方のユーザ」などです。

リソースとは「ヒト・モノ・カネ・情報・時間・知的財産」
それらをいつ、どこに使うのか?を決めるのが戦略です。

始めに「デジタルでは見込み客の質を問えない」にあったように、「より潜在的なユーザ」に対して接客を自動化させるためにデジタルを使う、というのがデジタルマーケティングの本質であると思います。もっというと、潜在的なユーザにどこまでアプローチするか?(アプローチしない先を決める・やらないことを決める)を決めることが肝要だと思います。

デジタルはWebに触れているユーザであれば誰にでもアプローチできるし、その結果の数値も集計し可視化することができます。しかし、その結果、本来必要のない施策までもやめられずダラダラと続けてしまう、ということもよくあります。それが結果、ヒト・カネ・時間のリソースを浪費してしまう、という結果になります。

デジタルマーケティングでは費用対効果が合わないことをデジタルに代用すると同時に、やらないことを判断するスキルも同時に必要になると考えています。


「細かい仕事」が増える3つの理由

デジタルに関わる人たちの時間を奪う仕事は「重箱の隅をつつく」細かい仕事です。言うまでもなく、ビジネス成果に与える影響は非常に限定的です。売上が増えることも、コストが減ることもほとんどないでしょう。それにもかかわらず、デジタルに関わる大半の人達の主業務は、こうした仕事なのです。

「重箱の隅をつつく」細かい仕事が増える要因となるデジタルの特質

①「顧客接点の数が多い」
一度始めたデジタル施策は、誰かがやめると宣言しない限り、永遠に終わりません。成果の出ない施策を惰性で更新し続ける担当者が、ゾンビのように増殖していくのです。定期的に振り返りの機会を設けて、効果のない仕事はやめるか手を抜くかを意思決定する必要があります。

②「全世界に常時公開している」
デジタルは「運用」される媒体であり、完璧な状態を維持することは不可能です。運用上のリスクは「管理」するものであり、「排除」することは決してできません。完璧を目指すのではなく、適切に手を抜いて「管理」すれば良いのです。

③「簡単にデータが集まりすぎる」
データが見えすぎてしまう特質によって、多くの人が「仕事した感」にばかりとらわれてしまっているのです。あくまで売上なりコストなりの増減を目的として、それらの原因を探るために解像度の高いデータを見るべきです。KGIである売上やコストへの影響がほとんどない、重箱の隅をつつくようなKPIを数%改善したところで、そんな仕事に価値はないのです。

これはもうあるあるすぎて3つとも共感してしまいました・・・。

①②③すべてに共通することは目指すべきゴール、本当に見るべき指標値を決めていないことが最大の原因だと思っています。

できるビジネスマンに共通するのは「よりクリティカルなポイントにリソースを投下し、やらないことを判断できるか」だと感じているため、判断できないマネージャーが「とりあえずやっておこう」「一応、残しておこう」といった判断しないことの罪が、メンバーの体力を徐々に奪っていき、疲弊した組織が出来上がってしまいます。

判断力を失い、疲弊した組織は数字の奴隷となり、やりがいもなく、つまらない仕事を消化するだけのタスクフォースとなり下がってしまいます。

「判断する力」はデジタルマーケティングに関わらず、ビジネスマンのスキルとして必要な素養であると思います。


マーケターの9割は「顧客が買うまでの流れ」を説明できない

なぜ「顧客が買うまでの流れ」をこれほど詳細に知らなければマーケターを名乗れないかというと、この顧客行動が企業側の想像と大きく乖離しており、これを知らずにまともな仕事など一切できないからです。お客さんの行動は、企業側の想定の斜め上をはるかに通り越して、ねじれの位置にあることがほとんどです。

これもクライアントの支援をしている立場から見て、よくある光景です。

つい先日、「広告を出したい」と、とあるクライアントに呼ばれてヒアリングをしたところ、ユーザの動きを知らない担当者が単に自分たちが売りたい商品の説明だけして、ターゲットに合わせて広告を出稿させてほしい、といった驚きの内容でした。

確かにWeb広告では詳細はターゲティングは行えますが、それだけでモノが売れるわけではありません。まず現状の顧客がどんな人か、どんな心理状態なのか、他社ではなく自社を選ぶポイントはなにか、クライアントが強みと感じていることを消費者も同様に強み(価値)と感じているのか、などの下準備が必要になります。

これをすっ飛ばして広告を出したところで、効果があるかどうかは博打となり、広告の無駄打ちとなる可能性があります。だからこそ、代理店側はクライアントのユーザを正確に把握する必要があるし、クライアント側にも把握することを求める必要があると思っています。


最速で的確にユーザのニーズを満たす

デジタルにできることは、何か期待を持って訪れたユーザに対して、最速で的確にニーズを満たすことだけです。しかし当然ながらニーズを満たすだけでは不十分です。初回購入につながるアクションに誘導しなければなりません。

例えば、BtoBならお問い合わせ、ECサイトなら初回購入、ニュースサイトなら会員登録などです。その場ですぐ購入しなくても、その先で売上につながるアクションに導く必要があります。

よく、LPやWebサイト設計の話をしていると、事前にクライアント側でストーリーをつくり、その順番に読んでもらえさえすれば見込が高まり、申込み・購入につながる、といった仮説を立てることがあります。

しかし実際にキャンペーン終了後や定期的な分析時にヒートマップや検索キーワード、その後の遷移ページなどを見てみると、その仮説通りにいくことの方が少ないのかなぁとも感じます。

もちろんストーリーをつくることがすべて無駄というつもりはないですが、クライアントのストーリー通りにユーザを動かせる、といった考えこそが間違いであるかもしれません。

じゃあどうすればいいか?ですが、それはユーザが望むニーズの最大公約数をコンテンツに落とし込み、それだけを訴求する、ということかなと思います。複雑なシナリオやA/Bテストではなく、シンプルに訴求内容の結果どうだったか、です。

結果が良ければ継続し、ダメならユーザ理解を含めて再検討する。それだけのことかなと思っています。


LTVを最大化するポイントを見極める

ここでは参考までに、障壁の高いものから順に、ゴールの種類を並べました。
有料契約や無料依頼の障壁は高く、サービスに関連しない資料などは障壁が低くなります。

①有料契約(定期):定期購入
②有料契約(単品):単品購入
③無料依頼(オープンクエスション):お問い合わせ
④無料依頼(サービス関連):資料請求・見積・トライアル
⑤無料依頼(サービス関連しない):ノウハウ資料請求など


例:
・お問い合わせ:訪問数【1万】×お問い合わせ率【0.5%】×商談化率【30%】×契約率【10%】×LTV【100万円】=150万円

・ノウハウ資料:訪問数【10万】×お問い合わせ率【5.0%】×商談化率【10%】×契約率【3%】×LTV【100万円】=150万円


この試算の結果になるなら、Webサイトのゴールはどちらにしても同じです。始めからこのようなデータがすべてそろっていなくても、まずは仮説ベースで試算してみましょう。ゴール設計による伸び幅が一番大きいため、様々なゴールを試し、LTVを最大化する地点を見極めるべきです。

これは私が広告・Webサイトの分析をする際にとても大事にしている視点だったので、わかりやすくまとめられていて参考になりました。

クライアントによっては上記①~⑤のCVの難易度とCV数・CVR・CPAなどの各種指標値を同様の難易度で考えているケースもあるため、その度にご説明をしています。

なぜ有料の申込と無料依頼を同様の難易度としてしまうのか?少し考えればわかるのではないか?と思う人もいるかもしれませんが、恐らくユーザ側に立って考える、ということが想像以上に難しいのではないかと思います。

マーケターの皆さんは息を吸うように日常業務となっているはずですが、1日中同じ会社にいて、同じ事業だけを数年・数十年と続けてしまうと、いつしかユーザを置き去りにしてしまうのでは、、と考えています。

(そのために我々マーケターに存在意義があるわけなのですが。。)

クライアント側に用意できる落としどころ(ゴール)と、それぞれの難易度、実績を実践→検証→仮説のサイクルを繰り返し、進めていくことが求められます。

字面にするとすごく当たり前のことなのですが、これができていない企業がいかに多いか、、ということです。。


おわりに(&18個のセグメントの定石)

最後に18セグメントの具体例がまとめられていますが、これらは本書でぜひお読みいただければと思います。私自身、さまざまなクライアントの業界理解が必要となるため、このセグメント別の打ち手はとても参考になりました。

それぞれの手法は多様化していますが、1つ共通点があるとすればBtoBでもBtoCでも、クライアント側の「情報資産」とユーザが望む「コンテンツ」の利害が一致させ続けている事業、サービスが伸びているのかなぁと思っています。

クライアントはユーザ理解を続け、ユーザが望むタイミングで望むコンテンツを届け続ける。ユーザは気まぐれで衝動的な行動が多いため、仮説通りにいくことばかりではないですが、そうしなければユーザに選ばれません。厳しい話ですが・・・。

また「おわりに」に記載されている一文が非常に心に残りました。

マーケティングにおけるデジタル活用という仕事は、語弊を恐れずに言えば「ゴミ」屋敷に突入する特殊清掃員のような仕事です。

デジタル活用(≒DX)は昨今トレンドであり、クライアントから悩みを聞くことが増えました。またコロナ禍で事業を成功させる難易度がさらにグッと上がったようにも思います。

しかし、実態は多くのオーバースペックのツールを前に、知見がなく判断できない担当者・経営者が多くの数字を前に立ち往生しています。

なぜ判断できないのか?

この答えは、

・ユーザへの理解(ユーザが何を望むのかを深く知る努力)
・成果へ直結する仮説の解像度不足(自社理解とユーザ理解のスイートスポットを知る)
・デジタル=運用の理解(たくさん失敗できるからとにかくやれ!)

ではないかと考えています。

私も1社でも多くのクライアントの成果貢献を目標に、この本で学んだことを実践していきたいな、と感じました。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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