「2020年4月受動喫煙防止法」は受け入れられるのか?

ローカルコラム

2020.02.19

古川 悠作

マーケター古川 悠作

こんにちは、古川です。

私は、仕事で飲食店さまに携わる機会が多く、静岡だけでなく、東京に週1回、名古屋にも月2回程度出張する機会もあります。

最近の話題は、今回のキーワードでもある「受動喫煙防止法」。2020年4月から飲食店で原則禁煙、です。

「受動喫煙防止法」とは??

これまで段階的に施行されてきた「改正健康増進法」が、2020年4月からいよいよ全面施行。学校や病院・行政機関といった公共の場だけでなく、ホテルやレストラン・居酒屋など飲食の場も原則“屋内は禁煙”となります。

ただし、飲食店の規模や形態によって適用される内容に違いがあるほか、分煙のパターンごとに細かいルールが存在します。

また経過措置として、客席面積100平米以下かつ資本金5,000万円以下の既存店舗は現行の喫煙ルールを継続することができますが、東京都の場合は、同時に全面施行する「東京都受動喫煙防止条例」により、さらに厳しい環境になります。

というのも都は“従業員の受動喫煙防止”という観点に立つためで、店が従業員を一人でも雇っていたら、客席面積などに関わらず原則屋内禁煙にしなくてはならないのです。

受動喫煙防止法は認知されているのか?

今春から始まる規制について、飲食店ではどのくらい認知され、対応が進んでいるのでしょうか。また、規制に対してどう思っているのでしょうか。ココで、首都圏に拠点を置く飲食店経営者・運営者を対象にアンケート調査が行われたので紹介します。

■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:503名
調査期間:2019年11月21日~11月27日
調査方法:インターネット調査

■「全席喫煙」の店舗は48.5%




■95%以上が「知っている」「聞いたことがある」と回答




健康増進法の改正により一定の場所以外で喫煙が禁止されることについては、営業に直結するためか「知っている」店舗が多くなっています。

今春から、一定の場所での喫煙禁止が義務化されることについて「知っている」「詳しくは知らないが、聞いたことはある」と答えた店は全体の95.6%。営業に直結する内容のためか、さすがに関心は高いようです。

改正健康増進法で“屋内原則禁煙”の対象となるのは、2020年4月1日以降にオープンする新規店/資本金5,000万円超/客席面積100平米超のいずれかを満たす店舗(喫煙を主目的とするバー・スナック等は除外)。

なお、対象であっても喫煙専用室(飲食不可)の設置は認められており、なかでも加熱式タバコ専用室を設置するのであれば、そこでの飲食は可能だそうです。

これらについてきちんと「知っている」と回答した割合は、資本金などの対象条件に関しては62.2%だったものの、質問が具体的な分煙パターンに及ぶにつれて3割前後にまで低下。

制度のややこしさゆえ、具体的な把握にまで至っていない状況がうかがえます。

■対策について過半数が「特に行動はしていない」



対策について過半数の52.1%が「特に行動はしていない」と回答されています。

分煙意向のある飲食店は全体の25%近くにのぼりますが、そのうち「分煙環境を検討し、今後対応予定である」と見通しが立っている割合が10.5%なのに対し、「分煙環境を検討したが、具体的な行動には至っていない」割合は14.1%。実際に「分煙環境を整備した」店は4%にとどまっています。

一方、「禁煙にした・予定である」は19.3%と2割近くを占めています。飲食店にとって、分煙環境の整備はハードルが高いことがうかがえます。

■分煙環境の整備には“高いハードル”。スペース・資金などが課題



分煙環境を「検討した」ものの、「具体的な行動には至っていない」理由として最も多かったのは「スペースがない」ことで、全体の40%近く。「コストが掛かる」という声も21.1%あります。

また、全体の約3分の1となる「方針が決まっていない」という声からは、禁煙には踏み切れないが、喫煙専用室を設けるのか、加熱式タバコ専用室を設けるのかなど、細かい部分を決めきれないという事情が汲み取れます。

より具体的な声を聞いてみると、

・資金と時間がないため(埼玉県/和食)
・20年近く営業しているのに今さら言われても、喫煙ブース作るなんて、そんなスペース無い(東京都/中華)


など、困惑する声が多数。専用室を作れば喫煙可能だという“お触れ”があっても、これからお店をデザインする場合はともかく、既存の店舗に新しく“部屋”をつくるのは、無茶振りが過ぎるといったところでしょうか。

また、

・まだまだ法令の変更があるかもしれないから(東京都/居酒屋・ダイニングバー)
・国からの説明が乏しい(神奈川県/中華料理)

といった意見も。

「規制」と言ったところで、具体的にどのように取り締まるのかがはっきりせず、また東京都だけでなく、兵庫県、千葉市等で地方自治体独自の条例を設けるなど、喫煙規制が全国統一でないことからか、様子見をする声も見られます。

■分煙にしたい飲食店の4割以上が「屋外の喫煙所」を検討。テナントの店からは「共用部に喫煙所を」



一方、「分煙環境を検討し、今後対応予定である」と回答した店に、どのような喫煙環境にするか聞いたところ、圧倒的に多かったのは、店内を禁煙にするかわりに「屋外に喫煙所を設ける」(43.4%)というもの。店内に喫煙専用室(飲食不可)を設ける店は26.4%でした。

実際に、分煙を検討している店にとって、“理想”の喫煙環境をたずねると、

・きちんとした分煙が出来るのであれば店内喫煙を可能にしたい(東京都/居酒屋・ダイニングバー)
・完全分煙。部屋で仕切りたい(神奈川県/和食)


と、屋内での分煙が良いという声が目立っていました。
またテナントビルに入っている店からは、

・バルコニーなどで吸える、またはテナントビルの共用部で吸えるにしてほしい(東京都/居酒屋・ダイニングバー)
・可能であれば借りているビルの一部に喫煙所を設置してほしい(東京都/バー)


など、共用部での喫煙所設置を望む意見が寄せられました。

そのほか、

・喫煙、禁煙は各店で決めてしっかりと表示し、お客さんが入店するかを決められたら良いと思う(東京都/居酒屋・ダイニングバー)

と、あくまでも喫煙環境は店の自由にして、判断は利用者に委ねるべきという意見も根強いようです。

■禁煙にする最大の理由は、やはり「スペース問題」



「禁煙」を選択した店についてもその理由を聞いたところ、「分煙環境を設けるスペースがないから」が最大で、46.4%とほぼ半数。

続いて多かった回答は「禁煙にした方が顧客のニーズに合うから」(34%)で、時代の流れを尊重する姿勢が垣間見えます。

■店にとって、売上がプラスになる分煙とは?



大型の飲食チェーンなどが禁煙にすると、必ずといっていいほど、その何か月後かに売上の動向が話題になります。

今回の調査で「売上にプラスになると思う分煙環境」についても聞いてみたところ、最も多かったのは「全席禁煙(屋外に喫煙所あり)」(32%)。「一部喫煙席あり」(23.3%)、「全席喫煙」(16.5%)が続き、喫煙の可能性は残したいという店が9割という結果でした。

■利用客のニーズとの間で、板挟みの苦悩が浮き彫りに

最後に、禁煙・分煙環境に関してフリー意見ですが、ほとんどの店舗が屋内禁煙の流れには理解を示しながらも、

・店内は禁煙でも何ら関係無い。しかし喫煙場所の確保は必要です(東京都/イタリア料理)
・飲食店禁煙は歓迎ですが、屋外に喫煙所を設けるなど吸えるスペースは設けるべきだと思います。路上喫煙も禁止・室内もとなると喫煙者がかわいそうかなと思います(東京都/イタリア料理)


など、なんらかの形で喫煙できるスペースの確保は必要だという声が多数あがっています。とりわけ東京は、路上喫煙禁止区域の場所もあることから、道路に直面しているような店だと屋外に喫煙所を設けることも難しいという実態があるようです。

また、さまざまなスタイルがある飲食店だからこそ、

・飲食店は、個々のお店のスタイルがあり、国、市町村が一律で決める必要は無いと思う。店側にあった喫煙、禁煙状況をお客様に提示して納得して来店してもらうことが大事だと思います(東京都/イタリア料理)
・喫煙をしながら飲食したい方はたくさんいらっしゃるので、その方々が窮屈になりすぎないよう対応していきたいです(東京都/イタリア料理)
・喫煙できる・できないはお店が決定すればよい。喫煙できるお店が嫌なのであれば、そのお店に行かなければよい(神奈川県/焼肉)


といった、そもそもお客さんが自由に選べる飲食店に対し、“規制”として介入すべきではないといった意見のほか、

・当店でも、喫煙できないため、入店いただけなかったお客様が一定数いらっしゃる。完全分煙等であれば良いかもしれないが、厳しすぎるような気もします。外食離れにならなければいいのですが…… (東京都/フランス料理)
・お酒を扱う店舗は売上に影響があると思う。分煙室を義務付けるなら、もっと政府が支援しないと廃業店舗が増えるのではないかと思う(東京都/テイクアウト)


など、外食産業全体への影響を懸念する声も散見されました。

実際に、自分が担当している飲食店でも、状況はさまざまです。いち早く情報を収集して、対策を取りコストを抑え(※国・県からの助成金・補助金を受ける)準備している店舗もあれば、法自体が4月に施工されることは知っていたが、情報を収集していなかったために、助成金・補助金が得られることも知らず、慌てて確認する飲食店もありました。

また、実際に対策を取るにしても、全面禁煙であれば話は別ですが、分煙する場合にはキャパの問題、またお店を出店している場所によってもルールが異なるため、困惑して対応に追われる飲食店も多いと感じました。

規制されると言っても、実際に施工される4月からどの様な状況になるのか、その時になってみないとわかりません。

いずれにしても、情報収集することの重要性、またそれに対して行動する大切さを感じる内容でもありました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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