新聞広告が若い人には届かない、なんて誰が言った?

ローカルコラム

2019.04.05

三浦 奈生

マーケター三浦 奈生

2018年の広告媒体別の費用が発表されました。

2018年日本の広告費(dentsu)

新聞購読者数の落ち込みが激しいこともあり、いわゆるマスメディアと呼ばれる新聞広告をはじめとしたTV・雑誌・ラジオに代わり、インターネット広告が前述の4媒体の合計に逼迫する勢いになっています。

なかには新聞広告の時代は過ぎてしまったのでは?という声もちらほらあります。
そんな中で最近、ある新聞広告が話題になりました。

私的メッセージな新聞広告

3月21日、東京ドームでアスレチックスとの開幕第2戦で引退した、マリナーズのイチロー選手。
その劇的な日から約1週間後、チームメイトであり、イチローを尊敬してやまないディー・ゴードン内野手が、チームの地元新聞である「シアトル・タイムズ」に出した、全面広告です。

「THANK YOU, ICHIRO」の見出しと「Dear Ichiro.」で始まる2,298字のテキスト。
それとゴードン選手とイチロー選手が抱き合う2枚の写真がシンプルに、全面に掲載されているだけの広告。

(画像の掲載がここではできないため、ぜひ記事を検索してみてください。)

広告というよりも、むしろ一個人の私的な手紙を、新聞を使って公開しているようにも見受けられます。

翻訳された文章を読むと、アメリカ人らしいジョークを交えながらも、ゴードン選手がいかにイチロー選手を心から敬愛、尊敬し、彼を通じて得られたすべての出来事に感謝しているかが強く伝わり、思わず胸が熱くなります。

ゴードン選手は「Instagramやtwitterへの投稿は相応しくないと思った、出来るだけ大きな声で、僕がどれだけ感謝しているのか、それを正しい方法で伝えたかった」と述べています。

ゴードン選手はなぜ新聞を選んだのか?

彼のInstagramフォロワー数は40万人。
投稿すれば、無料で多くの、しかもマリナーズファン中心の野球に興味がある人たちに効率的に届いたはずです。 ちなみにシアトル・タイムズの発行部数は2013年時点で約22万部。
それなのになぜあえて、不特定多数にむけて、けっして安くないお金をかけて新聞というメディアを使ったのか。

  • お金をかけることが、逆に誠意と考えた?
  • SNSを使って沢山の人に伝える、という必要がなかった?
  • 自分のフォロワー(野球ファン)以外にも伝えたかった?
  • 地域と密接にかかわるという意味では、野球と新聞の愛称が良いと思った?

マーケターではないゴードン選手が新聞というメディアを使ったのに深い理由はなかったのかもしれません。
ただ、今回の広告は、野球ファンだけでなく、非野球ファンの心も少なからず打ったはずです。選手そのもの、マリナーズというチーム、ひいては、一選手に強いメッセージを出させる「野球」というスポーツそのものに興味を持つ人が出てくるに違いないと思います。

「何を使うか」ではなく「何を伝えるか」

ちなみに私がこのことを知ったのは、まずTVのニュース、そしてその後SNS(twitter)でした。
つまり、アメリカの地元誌に掲載された広告が、結局TV、SNSなど他メディアに広がったのです(しかも海を越えて日本まで。もちろんイチロー選手だからということもありますが)。

年齢層が高めの人がターゲットだからSNSを使ったプロモーションがいい。
若い人に伝えたいから、新聞広告は不向きだ。ついつい、手法から語ってしまいがちです。

でも人の心を強く動かすようなコンテンツであれば、何を使うかは問題じゃない。
何を使うか、の前に、何を伝えるべきなのか。
それをあらためて強く感じた出来事でした。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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